中年のハルマゲドン

22歳の私と向き合う~私の聖戦~

読書再入門~2(罪と罰)

中年の今頃になってふいにかつての自分は読書好きだったことを思い出し、大江健三郎さんの本と出会い、三十数年ぶりに読んでみた『罪と罰

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とりあえず個人的な感想はですね・・やっぱりあんまり好きになれないですねwもっと明るいサクセスストーリーみたいなものが好きかな(;^_^A

 

ただ、色々と考えされられる小説だなとは思いました。子供の頃には漢字や言葉の意味も碌に理解していませんから分からなくて当然でしたが、大人になって改めて読んでみると少なくとも物語としては読めますよね。ここに世界史や民族史・宗教史・文学史なんかにも精通してると更に見方が変わってくるのでしょう。だから古典は書評がとても多いですよね。多くの人に読まれればそれだけ多くの感想が生まれる。また他人の感想を読むのも面白い。古典文学はこうして長く愛されるんでしょう。

私にはそんな深い知識はありませんからあくまで個人目線・自分の経験に重ねて読むわけですが、うだうだとゴタクを並べたてるのはこの辺にして感想を。

 

私がこの本を好きになれない理由は

①主人公に共感できない

これ見方によっては共感できると思うんです。人の弱さ・人生の脆さ・感情の危うさ・・この世のすべての人に共通する脆い部分。明と暗、光と闇、人間だからこそ誰もが持ちうる表裏一体な感情。

彼を一人の人間として見た場合、主人公の感情の変化に自分を重ねて己の弱さを振り返ることもできるでしょう。しかし私の場合、彼が強く男性を意識した考えに囚われているという部分にどうも感情移入できませんでした。

特に妹の婚約を知った彼が婚約者に抱いた疑念と憎悪の感情。このへん正に男性ならでは、いかにも男の発想だと私は感じます。

【妹の婚約を知った彼は婚約者に対し、妹を侮辱してると罵り婚約に反対します。で、この婚約者も愚かで主人公との問答の末、自らの闇の部分を露呈してしまい、当の妹までをも失望させこの婚約は破談になります】

しかしこれ・・良いじゃないですか。金のために結婚していいじゃないですか。何が侮辱なんですか。

【裕福な婚約者が貧乏な生活を経験した娘を嫁に取りたいと願い、貧しくとも聡明な妹に求婚した。しかし婚約者の中にある、妻より優位な立場に身を置きたいという欲望を、同じ男である主人公は知っている】

いいじゃないですか!何が不満なんだ!!!自分はその妹と母親の仕送りで生活してる木偶の坊のくせに甘ったれたこと言ってんじゃねぇよクソガキが!!

47歳のおばさんはこう思ってしまいます。。

(まぁ最終的に妹は主人公の友人の好青年と結ばれるので結果オーライなんですけどね…)

 

②登場人物の8割がキチガイ

まあこれに関しては当時の世相もありますよね。街の人から主要人物まで出てくる人出てくる人みんな狂気じみてる。まともそうに見えた主人公の母親でさえ終盤には狂ってしまう。

そして文章の書き方。これは大江さんの本でも解説されてましたが複数の人が同時に話す文章の技法、これが非常にキチガイ度を高めてます。あっちもこっちも、あの人もこの人も・・といった感じで人々の会話が入り乱れて描かれます。日本の小説ではもう少し簡潔に描かれますが、まるで映画のように複数人物の会話が交差します。しかもその内容もころころと変わり、読み手は集中して読まないとこっちが気が狂いそうになります。慣れなんですかね・・・。

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まぁ時代背景や西洋と東洋の違い、宗教観など複雑な要素をもっと習得すればもっと面白くなるんでしょう。もっと読書していきたいですね。

好きか嫌いかで言えば好きではないですが、とりあえず今回読んだ罪と罰を一言で表すと

陰と陽

かな。この世はすべて表裏一体。

上で登場人物の8割がキチガイと書きましたが、この”キチガイ”という概念も脆いもので、それを誰が決めるのか、その価値観はどこにあるのか、果たしてその概念は正しいのか。

否。

これは深いテーマですよ。そういった不安定な人間の要素含め考えるきっかけ、読書再入門としては良い一冊でした。

また数年後に気が向いたら読んでみようと思います。